ゾマーさんのこと(パトリック ジュースキント)
(画像は原著です)
die geschichte von herrn sommer
ゾマーさんのこと (単行本)
パトリック ジュースキント (著), Patrick Suskind (原著), 池内 紀 (翻訳), ジャン・ジャック サンペ (1991年)
どちらかというと児童書ですか。
120ページほどの、そして、サンペさんのとても淡い水彩画が一杯挿入されている、話。
語り手が木のぼりをしていた頃から、それを卒業するまでの思い出話。
そして、村一番の変人ゾマーさんの話。
ゾマーさんはとにかく歩く。毎日毎日一日中。雨が降ろうと、風が吹こうと、雪が降ろうと、雹が降ろうと、黙々と。
背中にはバターパンだけ入った殆どからのリュック。手には身長より高い瘤のあるステッキ。
誰とも話さない。誰も訳も知らない。慣れてしまってただ風景のよう。
ぼくが車で父と出かけての帰り道。大嵐。雨がやがて雹に変わり、やがて霧雨。
そんな中、やはりゾマーさんは歩いていた。乗りなさいと、声をかけたところ。
”ゾマーさんは右手のステッキを左手に持ちかえた。こちらに向き直ると、挑みかかるようでもあれば、絶望的とも見える仕草でステッキを何度も地面に突き立て、声を荒げて、はっきりと言った。「ほっといてもらいましょう!」“
格好いい〜…
ほくが木のぼりをしなくなった頃、ぼくは偶然に目撃する。
ゾマーさんが湖の真ん中に向かっていつものようにずんずん歩いていくところを…
じっと見送った。
そして、そのことは誰にも話さなかった。
ゾマーさんは不安定なアイテンティティだったり、ACだったりの象徴?
そんなのを背負って消えていったゾマーさん。
そして、ぼくは思春期を卒業する。
そんな、感じ。
ちょっと、西原理恵子さんの「いけちゃんとぼく」に趣が似ている気がします。
全然違うところのほうが多いんだけど。
二重丸の名作です!
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