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2008.11.20

春にして君を離れ(アガサ・クリスティー)

081120

春にして君を離れ (クリスティー文庫)
アガサ・クリスティー (著), 中村 妙子 (翻訳) 原作:1944

さすが、大英帝国勲章授けられただけの作家です。
とてもよく出来た名作です。

主人公のジョーン・スカダモア夫人は娘の見舞いにイギリスからバグダットに向かいます。
何となく娘夫妻に素気なくされ、その帰り道、砂漠の真ん中で、列車の故障に遭遇し、足止めを食らいます。
何と1週間。
あるのは駅舎と質素な宿だけ。あとは砂漠、砂漠、また砂漠。

砂漠って、それはそれは恐ろしいものです。
今までは隠れていた心の隅々まであからさまにします。

何もする事のないジョーンは、今までの生き方にいろいろ思いを巡らせます。
優種な女学生時代から妻として、母として。いつも完璧な私…と。

物語の大半は、砂漠の真ん中での思いを巡らす場面です。
女学生時代の校長の言葉、友人との会話、夫婦の会話、娘や息子との会話。
相手の事を思い、よかれとしていた事。
あれ?と。
何か違和感。
まわりの人たちは、私と接する事によってみんな不幸だった。
私は本当に相手の事を思っていなかった。満足していたのは自分だけだった。
しかも、本当の自分を考える事から逃げていた。
と悟って、分かってしまう。

砂漠って哀しいものです。恐ろしいものです。

つまり、彼女は、自分を必要としてくれる人を必要とする依存、共依存だった。

そして、夫、娘二人と息子は、「分かっている人」だった。

そして、彼女は悟り、決心し、家路につく訳です。
今まで、30年間の許しを請うために…

でも、びっくりするエンディング!

この家族もなんか、酷い。
旦那は、プアリトルジョーンと言うばかりで気づかせてくれないし。
子供達も当たらず触らず。

彼女のような人、まわりにもぼちぼちいますね。
男でも、女でも、老人でも、若者でも。
これは心の病気なのか。
いや、そうではなくて、そんなことを分からなないほうが幸せなのか。
この小説自体、分からないほうが良いのか?

読み進めるほどにだんだんと深く深く、苦い感動。

最後の、旦那の独り言。
酷いよ…?

彼女の人生は、そして続く。

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