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2008.09.15

ロストハウス(大島弓子)

080915

ロストハウス (Young rosé comics DX)
大島 弓子 (著) 1995

収録作品は5編。
「青い 固い 渋い」
「8月に生まれる子供」
「ロストハウス」
「クレイジーガーデンPART1」
「クレイジーガーデンPART2」

どれもこれも面白いんだけど、特に、表題作の感想です…
(以下は、あらすじと勝手な深読みと感想が入り交じったもの…)
(ちょっと長いよ…)

主人公の「実田えり」は一見普通の女子大生。
でも、ちょっと心が病の状態です。
親しい交友関係もほとんどありません。
家に帰ると叫びと消音枕の日々でした…
「閉ざされてしまった世界」です。

そんな彼女がある日、理工系2年生の男子学生にナンパされます。
すげなく断るも、幾度も幾度も。
一悶着があり、やがて彼女が条件を出します。
1ヶ月間、あなたが自分の部屋の鍵をかけないですごしたら許してもいいわ。
そしてその間、あたしがいつなんどき部屋に入ろうとあなたは完ぺきにわたしを無視してすごすの。
それができたらね。

そして、話は「実田えり」の保育園時代に変わります。
アパートのお隣の住人、鹿森さん(わたし的にはホントの主人公!)は独身でかけだしの新聞記者らしい。
いつもかけあしで出て行く。

ちょっと鹿森さん、鍵かけ忘れてますよ!
あっ、いいんです。とられるものなにもないし。
えりちゃんはこっそり覗き込んで汚い〜と。
幼稚園から帰って来てこっそり忍び込み片付けようとするも、よけいに散らかしてしまう。
大声で泣いている所にお母さんが仕事から帰って来てお目玉。
鹿森さん(本主人公)は、うちで遊んでもいいよ、と。
お母さんは絶対入ってはいけませんよ、と。

つまれてくずれた本。
飲みのこしのコーヒー。
灰皿の灰。
堆積したほこり。
型をくずしてつりさげられたジャケット。
蜘蛛の巣と蜘蛛。

不思議な開放感。
持ち望んでいた「解放区」
ただつもるようにつもるチリ。
なるようになるのさ、というからまった電気コード。

両親は共働きの様。
一人っ子の様。
我が家はきちんと整理され清潔だけど、なんか息苦しくて、窮屈だった様。
なんだか本当の親子の触れ合いは少なかった様。

エリちゃんは毎日、鹿森さん(本主人公)の部屋に入り浸ります。
もちろん親には内緒で、おやつ持ち込みで。
「解放区」

やがて、鹿森さんに彼女が出来、一緒に住むようになります。
やがて変化。
ドアを閉じたのは、鍵をかけたのは彼女。
彼女は、在宅でタイプライターに向かって仕事をしている様。

「閉ざされてしまった世界」です。
重いくるしい。
重いくるしい。

ある日、ドアが開いています。
彼女がエリちゃんに言います。
あたし、あの蜘蛛よ、と。
そして、入り浸りの日々が戻ってきます。
戻って来た「解放区」

突然、彼女が交通事故であっけなく死んでしまいます。
蜘蛛が死んだ。
蜘蛛が死んじゃった。
蜘蛛が死んじゃったあああ。
えりちゃんは男の人が慟哭するのを初めて見ます。
やがて、つもりゆくかなしいチリ。

ほどなく良いマンションが見つかったエリちゃん一家は引っ越します。
エリちゃんの思いを聞く事なく。
しばらくしてエリちゃんはアパートに戻ってみます。
鹿森さんは引っ越していました。
大家さんも行き先が分からないそう。
永遠に失われてしまった「解放区」!!!

そして話は大学生時代に戻ります。
そこでは理工系ナンパ君の耐える日々が続いています。
毎日来るエリちゃん。でも話しかけてはいけません。無視しなけりゃいけません。
ある事件がきっかけでエリちゃんから話しかけ、お茶を飲みにいくことになります。

そこで、理工系ナンパ君のバイト先での話。
上司の同僚で部屋に鍵をかけた事のない変なやつがいたとの事。
そいつは頭も切れて、仕事も出来たんだけど。
昔、恋人に死なれてから結婚も考えなかった様。
その上司はある日、町でその同僚がある状態になっているのを見かけた様。
上司は思ったそう。
ああ、彼はついに全世界を自分の部屋にしたのだ。そしてそのドアをあけはなったのだ。

鹿森さん!

エリちゃんは一晩中、鹿森さんを探しまわります。
明け方になりエリちゃんは感じます。
わたしの前で世界のドアがとつぜん開け放たれていくのが。
この世界のどこでも自由に遊んでも良いのだと。
心が病の状態から本当の癒しが訪れたのでした。

つまりですよ。
ちょっとしか出てこないけど、わたし的に、本当の主人公は鹿森さんでした。
やはり何らかの心の傷を負っていた鹿森さん。
恋人に死なれより深く傷ついた鹿森さん。
でもやがて悟りの境地に入り、癒される。
この世界は素晴らしいんだ、愛おしんだ、と。
そして、周りの人をも癒してしまう。

この着眼点というか、なんというか凄いです。
この文章じゃ分かりにくいと思うので是非、是非読んで下さい。
もう、感動しました。

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